チャットボットの仕組みに焦点をあて、ルールベース(シナリオ型)のチャットボットとAIチャットボットの違い、さらにAIチャットボットでも従来の機械学習系のチャットボットと次世代の生成AI技術を活用したチャットボットについて詳しく解説しています。本記事では、ビジネスマンにもわかりやすく、チャットボットとは?について解説しています。
チャットボットとは、人工知能(AI)、機械学習(ML)、自然言語理解(NLU)、自然言語処理(NLP)などのアルゴリズムを利用して、人の会話を模倣したメッセージをテキストで送信できるコンピュータープログラムのことを言います。チャットボット技術の主たる目的は、直接人間が対応せずとも、24時間365日、同時に複数のユーザーに対して問い合わせ対応が行える点です。チャットボットの用途は様々で、見込み顧客に対するエンゲージメントの向上、既存顧客のサポート満足度の向上、企業が提 供するサービスの理解促進を促すナレッジ検索等、多岐にわたり役立つことが期待されています。
チャットボットの仕組みを理解することは、チャットボットの回答精度に紐づくため、非常に重要なチャットボットの評価指標になります。人間がテキストで打ち込んだ質問をチャットボットがどう理解して処理するかは適用技術によって決まるからです。
チャットボットの仕組みは大きく2つに分類することができます。ルールベース(シナリオ型)のチャットボットと、AIチャットボットです。
ルールベースのチャットボットは、事前にチャットボットの運営者が会話のルールを定義しユーザーからの質問に対して条件分岐をさせることで適切な回答を導きます。メリットは想定される質問に沿って回答へ誘導し、予め用意された回答を正確に答えることができる点です。デメリットはルールに記載されていない変化球のある質問や表記揺れなど柔軟性が低い点です。また、プログラム通りの想定質問には正確に答えることができますが、会話を記録して独自に会話の改善を図ることができません。ルールベースのチャットボットは運営者側に顧客に実行してほしい明確なタスクや目的が存在する、もしくは単純な質問や受け答えが必要な場合に有効です。
例えば、ルールベースのチャットボットに「パスワードの再発行方法は?」と聞いた場合、まずはキーワードの抽出を行います。この場合「パスワード」と「再発行」です。これらのキーワードをデータベース内で検索して回答を探し出します。
また、「パスワードの再発行方法は?」と似たような「パスワードのリセット方法は?」という質問があった場合、データベースの中に「再発行」=「リセット」という言葉の揺れの定義づけがされている場合は、回答を探すことができますが、データベースの中でマッチするキーワードがない場合は、適切なキーワードをユーザーが打つまで質問の言い換えを求めます。
AIチャットボットは、顧客の質問や疑問に対して対話形式で解決していくソフトウェアです。生成AIのプロバイダーとして著名なChatGPTやBardなど大規模言語モデル(LLM)を活用したAIチャットボットは、機械学習、自然言語処理、深層学習、自然言語理解、感情分析などあらゆるデータを活用したテクノロジーを活用してコミュニケーションを行うため、ルールベースのチャットボットより、膨大な量のデータを素早く分析して、データに基づいた滑らかで自然な会話を実現することができます。
人工知能(AI)とは、人間が自ら予測して脳内で処理しているタスクと同様の処理をコンピューターに実行させるための技術の集合体のことを意味します。例えば、人間は言葉を理解して、対話の前後に文脈を読み取って、自らの意思決定に基づいて行動を行い、結果をもとに学び、改善をします。人間が行っている複雑なプロセスと似たようなことをコンピューターが実行するには、コンピューターサイエンス、データ分析、音声認識、ハードウェアエンジニアリング、言語翻訳、言語学、神経科学、哲学、心理学、ソフトウェアエンジニアリングなど、複数の技術や知識を要します。
機械学習(ML)のAIチャットボットは、ユーザーの質問をパターン認識して、過去の会話から対話をすることが可能です。開発者が構築したAIに学習させるアルゴリズムに従って、整理されたデータをAIにフィードすることでチャットボットを訓練し、中長期的に回答精度を高めていくことが可能です。AIチャットボットのメリットは自社のデータを元にチャットボットを学習させて、知識レベルや回答精度を高められることです。また、機械学習のアルゴリズムによっては、タスクをこなす、予測をする、顧客の潜在的なニーズを汲み取るなど高度な人工知能を有したチャットボットを目指すことも可能です。一方、デメリットは、AIの学習データを運営者側が用意する必要があります。AIが理解しやすい状態にデータを整形し、情報をまとめない限り、精度の高いAIが完成しない可能性があります。
最も人間に近いコミュニケーションを実現する最新のAIチャットボットは、ChatGPTやBardを代表するLLMを活用したチャットボットです。顧客の曖昧な質問に対して会話の前後の文脈を理解して適切な回答を対話ベースで導き出し、表記揺れにも対応することができます。一方、LLMを法人の事業者が活用するには、いくつかのハードルが存在しています。例として、一般的に利用されているAIの機械学習に企業情報が利用されてしまう、機密情報の漏洩という観点からデータが共有できない、チャットボットの会話のコントロールが事業者側で難しいなど。生成AIチャットを法人が活用するには、ChatGPT等のLLMへ外部から必要に応じてアクセスし、不必要な情報は共有しない、システムを提供している生成AIチャットボットを構築する必要があります。
チャットボットは高度な技術が適用されて実現できているコミュニケーションツールですが、裏側の仕組みの理解を行った上で、導入をしないと運用面で工数がかかり本来目的としていた業務効率化が実現できない場合があります。チャットボットを導入した時の作業工数や実際に運用を開始した際の評価指標などを明確に定める、もしくはデータ分析ツールやサービスを提供している事業者と導入の検討を行うことが推奨されます。
チャットボットの利用や効果に関するデータは、企業や顧客にとって非常に重要です。
以下は、チャットボットに関するいくつかの重要な統計データです。
これらの統計は、チャットボットが顧客サービス、リード生成、コスト削減など、多方面でビジネスに貢献していることを示しています。今後もチャットボット技術の進化と共に、その活用範囲と効果はさらに広がっていくことが期待されます。
チャットボットを導入する前に知っておきたいチャットボットの仕組み、技術、歴史、ツール、導入方法、導入事例、海外事情について解説をしています。